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節税でも否認される!?

(2013年6月 3日 16:07)
さすがにこの時期。
税務調査の個別相談がかなり増えてきました。

個別相談の内容は相当に難しいのですが、
調査官も6月中旬までに終わらせたい意向もあって、
そのあたりは駆け引きも必要になってきます。

さて、受けている相談の中に、
「節税行為を否認指摘されている」事案があります。
(そもそも「節税」なのかどうかの争いもあります)

「えっ!?節税行為でも否認されるってあり得るの?」
と思われた方は注意が必要です。

まず、節税と脱税の定義ですが、

「節税=合法」
「脱税=違法」

と非常に単純です。ここで1つ問題になるのが、
節税と脱税の間が大きいという問題です。
この「間」を一般的には、「租税回避行為」と呼んでいます。

例えば、個人で1億円の不動産収入があるとします。(不動産の名義はすべて個人です)
所得税の税率が上がっている昨今ですから、「節税行為」として、親族が役員になる法人を設立。
その法人に不動産のすべてを賃貸し、法人が不動産を転貸して収入を得たとします。

この法人は個人に対して賃料を払うとともに、利益の範囲内から役員に報酬を支払います。

実態は何も変わっていないのかもしれませんが、
所得分散することで、確実に「節税」することができます。

これは、いわゆるサブリース方式による、不動産管理会社を使った「節税行為」なのですが、
これは本当に「節税」なのでしょうか?
脱税でないことは確かですが、租税回避行為ではないでしょうか?

つまり、1つ1つの行為自体は確かに合法なのですが、
組み合わせてみると、税額を減らす行為になっています。

問題なのは「節税行為であったとしても否認されるのか」という論点です。

受けている相談の中で、このようなものがあります。

【相談内容】

弊社のお客様で、個人向けのスクール事業を行っている法人がおります。

1 スクールへの申込時点で、受講料を一括して収受しております。
2 返金義務はありません。
3 スクールは全4-6回で、出席出来なかった分は後日振替受講が可能。

といった要件で実施されております。

以前の顧問税理士は、現金収受時に売上を一括計上していましたが、
弊社に切り替わった段階で、役務の提供を行った段階で売上を計上する、
つまりそれまでは前受金として計上する方法に切り替えました。

しかし、現在税務調査で売上の計上時期について否認指摘を受けています。
調査官の言い分は、返金義務がないのであれば売上は受け取った時点で一括計上すべき、というものです。

調査官は、売上の計上時期に関して、この事案において明確な根拠を持っているわけではないようです。

それよりも調査官は、「同じ行為について、ある時期から売上計上時期が後ろにズレるのはおかしい」と主張しています。
どのように対応すればいいでしょうか?

この相談内容については、節税という論点から考えてみましょう。

税務調査を行っている調査官からすると、同じ経済実態にもかかわらず
売上の計上時期が後ろにズレている(ズラしている)のはおかしい、
と主張しています。

つまり、節税目的のために売上の計上基準をズラすのは認められないとして、否認指摘しているわけです。

このような否認指摘の根拠が認められるのでしょうか?
認められるとしたら何による根拠なのでしょうか?

わかりやすいように、公開裁決事例をみてましょう。
役員の分掌変更による退職金の例です。

分掌変更による退職金は、「実質的に退職したと認められる場合」には退職金を損金として認めるという通達に則ったものですが、このようなケースでも、節税目的であれば納税者が負けています。

「役員の分掌変更の翌事業年度に支払われた金員を当該役員に対する退職給与として取り扱うことはできないとした事例」
(平成24年3月27日裁決)

この裁決では、このように述べられています。

「一部支払われた後の退職慰労金の残額については支払時期やその支払額を具体的に定めず漠然と3年以内とされており、請求人の決算の状況を踏まえて支払がされていることがうかがえることからすると、本件金員をその支払日の属する事業年度において損金算入を認めた場合には、請求人による恣意的な損金算入を認める結果となり、課税上の弊害があるといわざるを得ない。」

つまり、利益が多額に計上されるから、無理やり退職金を支給したことにしたのではないか?
その損金算入を認めるとおかしい、と判断しているわけです。

不服審判所はこうまとめています。

「以上によれば、本件分掌変更の時に本件金員が支払われなかったことが合理的な理由によるものであると認めるに足りる証拠はなく、本件金員を退職給与として取り扱うことはできないというべきである。」

つまり、合理的な理由があればいいのだが、ない場合は「課税上の弊害から」認められない、としているのです。

結果として、マトリックスにまとめるこうなります。

  節税目的 節税目的外
違法 × ×
合法 ×

同じ合法行為であっても、節税目的は認められず、
節税目的ではないことを主張しないと節税行為(合法)であっても否認されるというわけです。

上記の売上計上時期の問題に関しては、調査官にこう主張しなければ否認されてしまいます。(法的に考える売上計上時期は別と考えてください)

「売上の計上時期を変えたのは、売上を後ろにズラすことが目的だったわけではなく、あくまでも過去の売上計上基準が間違っていたと判断したためです。役務の提供が完了した時点で売上計上するのが当然だと思いますので、そのように変更しました」

つまり、

  • 節税目的ではないこと
  • 売上計上時期を変更したことに合理的な理由があること
の2点を主張しなければならないのです。

法律的な根拠はさておき、税務調査で理由を聞かれた際に「節税目的です」と答えてしまうことで否認されるリスクは確実に上がります。

この点を理解しておくと、税務調査の対応では、
「いかに節税目的ではない合理的な理由を主張できるか」
が大事だということに気づきます。

ぜひ参考にしてください。

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