<<謹賀新年>>
新年あけましておめでとうございます。
よりいっそう税務研究情報の充実に努める所存でございますので、本年も宜しくお願い致します。
新年の初稿は、税務調査研究会のメンバーに相談があった、昨年終了した事案のご紹介です。
大阪市内で建築工事を請け負う会社に税務調査が入り、
作業員に対する支払いを全額外注費で計上していたところ、
調査官から給与と指摘を受けたものです。
「給与か外注費か」という問題は、今までにも 2度ほど相談を受けたことがありましたが、この事案に関してはなかなかに 不利な条件がそろっていました。
列挙してみると下記のようなポイントがあります。
1.契約書は一切ない
業務委託契約書などの書面は一切ありません。
正直この業界で契約書があるとは思えませんが・・・
それでも不利には違いありません。
業務委託契約書などの書面は一切ありません。
正直この業界で契約書があるとは思えませんが・・・
それでも不利には違いありません。
2.現場までの移動
職人さんが常時10-15名いるのですが、
現場までの移動は、自家用車を持っている2名以外、
法人が保有する車で現場まで移動している。
職人さんが常時10-15名いるのですが、
現場までの移動は、自家用車を持っている2名以外、
法人が保有する車で現場まで移動している。
3.残業代あり
職人さんは人ごとに決まった日当(1日20000円など) で支払っているのですが、なぜか全員の支給(支払)金額に 10円単位の端数があります。これは残業代とのこと。
しかも残業代の計算は、日当単価の何割などではなく、 職人本人が適当に請求している。
職人さんは人ごとに決まった日当(1日20000円など) で支払っているのですが、なぜか全員の支給(支払)金額に 10円単位の端数があります。これは残業代とのこと。
しかも残業代の計算は、日当単価の何割などではなく、 職人本人が適当に請求している。
4.(正式な)請求書はない
ではどのように支払いをしているのかというと、
出面帳から労働日数を計算し、職人さんから請求がくる
交通費(立替分)と残業代を足して支払うとのこと。
5.支払い日が違う
この法人の従業員に対する給与は20日締の25日払いですが、
職人さんへの支払いは末日締の10日払いです。
しかし、10日払いではなく25日払いの職人さんが 2?3人だけ存在していました。
この法人の従業員に対する給与は20日締の25日払いですが、
職人さんへの支払いは末日締の10日払いです。
しかし、10日払いではなく25日払いの職人さんが 2?3人だけ存在していました。
6.現金払い
当然職人さんへの支払いは振込なのですが、
1人だけ現金払いの人がいました。
不正かと疑われましたが、現金で受け取りたいという 職人さんの強い要望があっただけのようでした。
当然職人さんへの支払いは振込なのですが、
1人だけ現金払いの人がいました。
不正かと疑われましたが、現金で受け取りたいという 職人さんの強い要望があっただけのようでした。
7.保険
ここが問題だったのですが、現場で起こりうる事故に備えて法人が保険に加入していました。
この保険は、「職人さんに何かあった場合に 法人が保険金を受け取る」契約のものです。
(それ以外にも現場建物等の損害も含まれています)
保険料に関しては、負担している(つまり請求して 支給額から差し引きしている)職人さんもいますが、 ほとんどの職人さんは負担していません。
ここが問題だったのですが、現場で起こりうる事故に備えて法人が保険に加入していました。
この保険は、「職人さんに何かあった場合に 法人が保険金を受け取る」契約のものです。
(それ以外にも現場建物等の損害も含まれています)
保険料に関しては、負担している(つまり請求して 支給額から差し引きしている)職人さんもいますが、 ほとんどの職人さんは負担していません。
8.固定的に働く職人
職人さんの中には、1年のうち数ヶ月のみ働いてもらっている方もいますが、多くの方は支給金額に上下はあるものの毎月固定的に働いてもらっています。また、他の会社・現場でも(掛け持ちで) 働いている職人は2人だけでした。
職人さんの中には、1年のうち数ヶ月のみ働いてもらっている方もいますが、多くの方は支給金額に上下はあるものの毎月固定的に働いてもらっています。また、他の会社・現場でも(掛け持ちで) 働いている職人は2人だけでした。
以上がこの事案において外注費を給与と指摘された
根拠として挙げられました。
なかなかに厳しい状況だったことは間違いありません。
なお、税務署の内部通達で出されている給与・外注費の判別基準は下記で、 総合勘案して決めるとされています。
1.会社への属性
その会社の仕事を行う場合、その会社の承諾を要するかどうか
2.業務の裁量権
個々の作業について指示を受けるか、その人の代わりに
他人へのアウトソーシングが許容されているか
3.勤務形態
勤務時間、勤務場所の拘束を受けるか
4.支払形態
・定期の月額払い等によるものか、または完成従量によるものか
・定期昇給・退職金の支給等の取り決めの有無
・残業手当等、賞与支払いの取り決めの有無
・タイムカード、出勤簿管理の有無
・請求書発行の有無
・支払日が会社の従業員への給与支払い日と同じか、
外注先に支払う日と同じか
5.福利厚生面
・社会保険の加入・厚生施設の利用など、従業員との取扱いに差があるか
・忘年会などに出席して会社負担になっているのか、自己の負担によるか
6.その他
・原材料・作業用具の支給状況、経費の負担状況
・引渡し未済品の不可抗力により滅失の場合の、その報酬請求権
なおこの事案の決着は、上記のような
「論理」とはまったく別のところでつきました。
1.嘱託の調査官
これは事前に顧問税理士が調べていたことですが、
調査担当者は、嘱託(再雇用)の調査官(統括官で定年退職)と新人の調査官の2人でした。
予想通りでしたが、嘱託の調査官は非常に鋭いポイントを指摘してきますが、
結局のところ全額否認までもっていく気がありませんでした。
2.期間
10月下旬から着手された税務調査でしたが、
こちら側が税務署に要請された宿題をなかなか提示せず、
のらりくらりと先延ばしにしていました。
これによって11月下旬になり、税務署から
「12月10日までに修正申告を提出してほしい」
という連絡がありました。ここまで来たら「勝ち」です。
外注費を給与とすることは認められない、と突っぱねたところ、
他の否認項目(かなり少額です)だけでの修正申告で調査官(嘱託)は納得した、というわけです。
他の似たような事案でも同じでしたが、
調査官としても「給与か外注費か」という問題には
区別する明確な基準がないため、
なかなか否認しきれないものです。
もちろん納得して修正申告となれば別なのですが、
「じゃあ更正してくれ」と言えば、実際に更正するのがもっとも難しい分野でしょう。
今後も具体的な事案をできるだけ配信するようにします。
税務調査でご不明な点は池田駅から徒歩7分「高原誠一郎税理士事務所」までお気軽にご相談下さい。
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高原誠一郎
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TEL:072-754-1888
高原税理士事務所は、大阪・池田を拠点とする税理士事務所です。 北摂地域(池田市・箕面市・豊中市・伊丹市・宝塚市・川西市・吹田市・茨木市・摂津市・高槻市・尼崎市・大阪市内)を中心に活動しています。
(その他地域はご相談下さい)