つい先日、税務調査研究会メンバーで新たに受けた税務調査事案でも、
青色申告の取消が問題になっています。
この事案の争点は「仮装」です。
仮装とは、国税通則法第68条に規定されている重加算税の要件なのですが、
青色申告の取消要件でもあるというわけです。
ここで
重加算税の要件である「仮装」と
青色申告の取消要件である「仮装」
は同じなのかという問題が生じてくるわけです。
結論から書くと、要件が同じなのであれば
重加算税になるとすべて青色申告の取消になるわけですから、
現実的に考えてもそんなことはあり得ないわけです。
まず大事なのは、重加算税の要件である
「隠ぺいまたは仮装」 だけが青色申告の取消要件なのではなく、
「隠ぺいまたは仮装」して かつ「その他その記載又は記録をした事項の全体について、その真実性を疑うに足りる相当の理由があること」が要件なのです。
簡単にいえば、いくつかの帳簿記載を調べてみたけれど、
どれも間違っていて、帳簿全体がもう信じられない場合に 青色申告の取消になるというわけです。
「隠ぺい」や「仮装」したから青色申告の取消になるわけではありません。
しかしこの法令規定だけでは基準が明確ではないため、
事務運営指針を見ると
「定量的(金額)基準」や「帳簿書類への記載等が不十分である等のため、法第131条の規定による推計に よらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合」
程度の記載しかありませんので、具体性はありません。
ここで興味深い裁判があります。
平成16年2月26日東京地裁判決において
青色申告の取消要件である「仮装」とは何かが争われました。
裁判事案を簡単に説明すると、
【事実】
- 海外にある子会社に損失負担金を支出
- この支出を(国内にある)法人が損失計上
- 帳票類を改ざんした等の事実はなく仕訳をしている
- 課税庁は租税回避行為であると認定
- 重加算税は事務運営指針にある「帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、 帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、 帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること」 に該当するとして賦課
- 青色申告の取消処分については理由の附記がなかった
つまり国外に所得を移転させ、租税回避行為をした場合において
青色申告の取消が認められるのかどうかが争点なのですが、
納税者側が勝訴し、青色申告の取消処分が取消になりました。
この判決では下記のように述べられています。
"隠ぺい"とは課税要件に該当する真実の一部を隠すことをいい、
"仮装"とは、存在しない課税事実が存在するように見せかけることをいう ものと解され、いずれも行為の意味を認識しながら故意に行う ことを要すると考えられる
※ここだけでも非常に重要な内容で、重加算税に対する反論の抗弁書を書く際に引用しています (故意性が必要なのだが故意ではないことの主張)
さらに、
帳簿書類は、本来、その記主の私法上の取引内容と、
その効果を忠実に表すように記載すべきものであるから、
実際に行われた行為が私法上無効なものならば格別、
私法上有効である以上は、たとえそれが税法上の観点から、別個の評価を受けるものであるとしても、私法上の効果に 忠実に記載すべきものである。
このような意味で正確に帳簿が作成されているならば、
課税庁としても、納税者の行った私法上の取引行為の全体像を
正確に把握することができるのであるから、
納税者に対してはこのような帳簿作成を求めることで満足すべきであり、それ以上に税法上の評価をも考慮に入れた帳簿の作成を求めることは、納税者に対し自己の行う私的な取引行為のすべてに税法的な観点からの考慮を求めるものであって、 不当かつ過大な要求といわざるを得ない」
つまり、事実を会計仕訳したことで青色申告の要件を十分に満たしているとしており、税務判断とは別問題ということです。
なおこの裁判では、青色申告の取消要件を満たしていないことと合わせて、
取消処分の中で理由の附記がないことでも「違法」としています。
公開裁決事例でも、「帳簿の不実記載」(法人税)で 4事例がありますので合わせて参考にしてください。
青色申告でご不明な点は大阪・池田駅から徒歩7分「高原誠一郎税理士事務所」までお気軽にご相談下さい。
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