介護事業経営研究会のセミナーレポートVol.2「減算」
また、同一建物の定義としては、
上記施設において構造上・外見上・一体的な建物であり、
これまでの減算とは、処罰的な意味合いが強いものでした。例えば、職員の人員基準違反・定員超過などがそれにあたります。
今回の改定では、介護報酬改定における同一建物減算や訪問介護におけるサービス提供責任者配置減算では処罰的な意味合いが薄れて、政策的な方向を示す減算であります。
この同一建物減算は、訪問系サービスに対しては、
高齢者住宅などの施設における『囲い込み』への対処が主な内容になり、
訪問系の基本報酬は、利用者宅までの交通費を含んでの金額で設定され、
同一建物に居住する利用者には交通費が発生しません。
そのための減算と言うことになります。
通所系のサービスに対しては、基本報酬に包括された送迎加算分の適正化といえる内容となっています。
では、同一建物減算へはどのような対応をしたら良いのでしょうか?
これについては、そこまで神経質に考える必要はありません。
内容的には、一般的な費用と同じようにやりくりの中で吸収できる程度の減算だと考えてください。
もともと、同一建物に居住する利用者は、交通費も送迎も発生しません。
本来の形に戻ったと解釈してもらえれば何ら問題はないと思います。
高齢者住宅に介護サービスが組み込まれたような"一体的に提供されるサービス"は、介護事業者にとっても利用者の安定確保などの大きなメリットがあります。
高齢者住宅側との共存共栄のシステムは今後も大きな価値を生み続けることは間違ありません。
これからの高齢者住宅運用のポイントは、"併設される介護サービスがそれぞれ採算性が取れる計画で運営される"ことが重要になります。
一部で見られるような
"入居率の向上のために家賃を低く押さえ"
"建物自体の収益は赤字"
"併設される介護サービスが何とか収益を出し収支を保っている"
上記の歪んだ事業計画による高齢者住宅の運用は、
今後の制度の改正の中で経営上の破綻が出る可能性が高いと考えられます。
そう言った高齢者住宅の運用の経営リスクは大変大きなものでしょう。
適正な事業計画によって運営されている高齢者住宅への介護事業テナント展開は、
非常に有効な事業展開の手法だといえます。
なぜなら、現状の高齢者住宅の運営だけでは、新規利用者の展開は難しいためだとお考えください。
何らかの付加価値をつけた事業展開が必要です。
また、同様にお泊りデイサービスにおいても、
極端に低い宿泊代設定などを避け、適正な価格設定をキープすることが重要です。
レスパイトケアが進んでいる中で、お泊りデイサービス利用者及び利用者家族のニーズは確実に拡大してきています。
今後も有効な事業コンセプトであり続けることは間違いありません。
いずれにしても、高齢者住宅へのテナント入居をやめたり、お泊りデイサービスのサービスをとりやめることはやめた方が良いでしょう。
既存の利用者の減少を招いたり、新規利用者の獲得に苦戦するなど、逆に経営リスクを高める判断といえます。
適切な経営計画に基づいた介護事業経営を心掛けるべきです。
それでは、訪問系の同一建物減算の具体的な内容について解説をして行きます。
対象となるサービスは以下になります。
項目 | 内容(予防含む) |
減算率 | 所定単位数に90/100を乗じた単位数 |
対象サービス | 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、夜間対応型訪問介護 |
対象施設 | 養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、旧高齢者専用賃貸住宅 |
要件 | 利用者が居住する住宅と同一の建物に所在する事業所が、その住宅に居住する利用者に対して、前年度の月平均で30人以上にサービス提供を行っている場合、その住宅に居住する利用者に行ったサービスに対してのみ減算 |
また、同一建物の定義としては、
項目 | 内容(予防含む) |
減算率 | 所定単位数から94単位/日を減じた単位数 |
対象サービス | 通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーション |
対象施設 | 養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、旧高齢者専用賃貸住宅および、利用者が同一建物から通いサービスを利用する場合 |
要件 | 対象者が一人であっても、同一建物に居住する者、並びに、サービスの前後にそのまま事業所の宿泊するお泊りデイサービス利用者等を対象にして送迎費用分の減算。疾病ややむを得ない理由により、真に送迎が必要な場合を除く。 |
上記施設において構造上・外見上・一体的な建物であり、
本体建物と通所介護事業所などが渡り廊下でつながっている場合を含みます。
同一敷地内であっても完全な別棟や道路を挟んでいる場合は非該当にあたります。
減算内容については、前年度1月の利用実績を見ます。
同一建物に居住する利用者が30人以上になる場合に、その同一建物に居住する利用者の請求から10%減算となります。
それ未満(29人以下)の場合は、減算の対象になりません。
減算対象となるのは、同一建物に居住する利用者の請求額のみになります。
同一建物以外に居住する利用者の報酬は減算の対象にはなりません。
訪問系の減算要件である前年度1月当たりの利用実績は、
前年4月-当年2月の11月での『営業月』での実績をみて割算されます。
そのため事業開始年度については、前年実績がありませんので減算には該当しません。
また、同じく3月開業法人も計算期間から除かれるため、翌年度は減算に該当しません。
営業月数で計算されるために前年4?当年2月の実績が1月のみである場合も、計算結果が30人以上となる場合は、同一建物減算に該当します。
小規模多機能型居住介護の同一建物減算については、少し内容が異なります。
小規模多機能型居住介護の場合は、減算率は10%と同じです。
しかし、その要件は異なり、前年度の月平均で登録定員の80%以上の同一建物に居住する利用者に対してサービスを提供している場合に減算の対象となります。
定員上限の25人の契約者がいる場合は、20人が同一建物に居住しているかが基準となります。
また、居宅療養管理指導の場合も訪問系と同様の減算となります。
項目 | 内容(予防含む) |
減算率 | 報酬単位が10%減算されて新設 |
対象サービス | 居宅療養管理指導 |
対象施設 | 養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、旧高齢者専用賃貸 |
要件 | 同様 |
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高原誠一郎
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