行為計算否認を勉強しなければならないのか、というと、
税務調査で「これは行為計算なので否認しますよ」という「脅し」をかけてくる調査官がいるためです。
これが「脅し」なのか「本当に行為計算否認に該当するのか」を見極める必要があります。
租税回避行為を課税される根拠としての行為計算否認なのですが、
多くの税理士が経験したことがないことだと思います。
どの程度、行為計算否認で争っているのか、公開裁決事例の件数を調べてみると、
法人を使って所得税を圧縮しているという経緯もあることから、他の事例よりもかなり多くなっています。
法人税:7件 | 所得税:14件 | 相続税:1件 |
行為計算否認の規定はかなり曖昧な規定で、
かつ金額が大きくないと税務署も動かない内情もあることから、
行為計算否認が頻繁に使われているワケではなく、
自然と争うケースが多くなっています。
さらに、平成11年に総務庁から国税庁に勧告がなされ、
「課税の根拠を明示」「曖昧な否認根拠は排除」と、
課税要件が厳しくなりましたから、行為計算否認による否認はここで10年では一層難しくなっています。
まず、ここで実務上もっとも大事なことは、
法令で「更正又は決定をする場合において」と規定されていますから、
行為計算否認の規定は、修正申告の根拠にはなりません。
ですから、税理士として判断を誤り、調査官に
「これは租税回避行為なので、行為計算で否認になります。修正申告してください」と言われ、
これが誤っていることを知らず、修正申告をした場合は、税賠の対象になります。
ここは非常に重要な点で、理解できていない調査官もほとんどなので注意してください。
行為計算否認が問題となる典型例が「過大管理料」です。
個人で不動産を所有している者が、親族等を役員とした不動産管理会社を設立し、その法人に不動産管理を委託。
不動産管理料の平均相場は、不動産収入の8-9%だと言われていますが、不動管理料を高額に設定し、
- 不動産収入(所得)を圧縮
- 法人に所得を移転
- 役員報酬として親族に所得を分散
- 給与所得控除と税率の差分で税額を圧縮
という行為をすることです。
これは、不動産の所有者が管理料を高く払うか、もしくは管理会社がサブリースで手数料部分を抜いた形にするかの形態を問わず、行為計算否認の認定を受ける可能性があるのです。
では、管理料が何%なら行為計算否認の適用を受けないのか?
過去の裁決では、このような数字が出されています。
- 平成元年2月5日
当初割合:50% ⇒ 適正割合:15.43% - 平成4年11月19日
当初割合:35.91% ⇒ 適正割合:6.71% - 平成6年6月24日
当初割合:73.32% ⇒ 適正割合:11.33% - 平成12年1月31日
当初割合:46.41% ⇒ 適正割合:9.44% - 平成14年4月24日
当初割合:34.39% ⇒ 適正割合:14.36%
50%以上もの不動産管理料を払っている事案は異常だとしても、
どの程度なら裁決までいっているのかについては、上記のように30%超の設定が問題になっています。
つまり、法人税法第132条(同族会社等の行為又は計算の否認)では、
「その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、」が行為計算否認を適用する条件なのですが、不動産管理会社で考える「不当」は30%超なのかもしれません。
なお、税務調査研究会において受講者の方から聞いた話ですが、不動産管理料は20%未満に設定しておくと何も言われないそうですが、20%以上になると税務署の「形式基準」があるらしく、否認までされないまでも問題視されるという情報がありました。
この情報に関しては、国税側としては何らかの「定量的な」「形式基準」でいったん判断しているのかもしれません。
ただ裁決事例や判決を見ても、
20%程度で問題になっている事案は見当たらないため、
20%までが安全ライン、20-30%がグレー、
30%超でアウト、と見ておけば間違いなさそうです。
また、行為計算否認で注意が必要なこととして、否認された場合の調整があるということです。
例えば、個人が法人に支払っている管理料が100だったのですが、
適正な管理料は30だとして、70否認されたとします。
以前は、70の所得を加算して個人に対して更正処分がなされ、法人の所得は異動しませんでした。
つまり、個人のみ追徴税額を課され、法人は減額更正をされないという、非常に不利益な取り扱いでした。
しかし、平成18年の改正により規定が盛り込まれましたので、
上記のような例でいえば、法人の所得を70減らして税務署が職権による減額更正するよう規定されました。
こういう意味では、行為計算否認をされると片方だけが増額になるという不合理がなくなったということで、以前ほど行為計算否認をおそれる必要はなくなったとも考えられます。
また行為計算否認は、何か実体的変動を生じさせるものではありませんから、過大管理料として否認されたとしても、現金の返却等は不要です。
これを逆手にとって、個人から法人に対して無税でキャッシュの移動を行うことができる、いわゆる租税回避手段とする動きもあります。
この点については、今後法改正で網がかけられる可能性はありますが、行為計算否認の適用が少ない以上、
また、キャッシュを移動されるだけだという意味でも法改正はしばらくないのかもしれません。
行為計算否認でご不明な点は川西池田駅・川西能勢口駅から徒歩15分「高原誠一郎税理士事務所」までお気軽にご相談下さい。
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高原誠一郎
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